相続手続
未成年者の特別代理人選任申立
未成年者が相続人となった場合、未成年者は自分で遺産分割協議に参加することはできません。
しかし、たとえばご主人が亡くなって奥様と未成年の子が残された場合のように、親権者(母親)も未成年者と一緒に共同相続人となる事が多いかと思います。この場合、遺産分割協議を行おうとしても相続人としての立場と、相続人である未成年者の親権者としての立場の両方の立場で遺産分割協議に参加することになってしまうので公平な協議ができなくなってしまいます。
そのため、このようなことを利益相反行為と呼び、法律で禁止されています。
また、たとえば離婚した母親のように親権者自身が相続人ではなくても、相続人である未成年者二人の遺産分割を一人の親権者がすることもできません。
どちらの場合も、遺産分割協議をするためには、未成年者のために遺産分割に参加する特別代理人を家庭裁判所で選任してもらう必要があります。
なお、相続放棄の申述は、親権者と一緒に未成年者も放棄する場合は、利益相反行為とならずに親権者が行えます。
当事務所のサポート業務
当事務所では、相続手続と一緒に特別代理人選任申立手続のご依頼も承ります。申立書の作成・提出はもちろん、相続手続や特別代理人選任申立に必要な戸籍謄本や住民票などの取得、遺産分割協議書案作成のアドバイスなど、相続手続・特別代理人選任手続全体をサポートいたします。お気軽にご相談ください。
手続の流れ
特別代理人の選任が必要な場合の相続の手続は下記のような流れとなります
1.相続人の調査・確定
被相続人の戸籍謄本等を取り寄せて、相続人を調査・確定します。
2.遺産の調査・確定
遺産分割協議案を作成するため、不動産は登記簿謄本や名寄帳など、預貯金などは通帳や残高証明書などで調査・確定します。場合によっては、信用情報を取り寄せて借金の有無等も調査します。
3.遺産分割協議案の作成
特別代理人選任の申立をする際に遺産分割協議案を提出しなければなりません。遺産分割協議案は、原則として未成年者にも法定相続分の遺産を確保したものでなければなりませんが、相続財産の中に預貯金等の金融資産の割合が少ない場合であっても「代償分割」の方法により未成年者の相続分を確保することも可能です。
4.特別代理人選任の申立
特別代理人選任の申立は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立書には、特別代理人の候補者を記載し、遺産分割協議案を提出しなければなりません。
5.特別代理人選任の審判
裁判所で書類を審査して、内容に問題がなければ特別代理人選任審判がおります。審判の前に裁判所より呼び出されることはほとんどありませんが、照会状が届くことがあります。また、特別代理人候補者には、特別代理人就任を承諾するかどうかの照会状が届きます。
6.遺産分割協議
特別代理人選任の審判がおりたら、特別代理人と他の相続人全員で遺産分割協議案のとおり遺産分割協議書を作成すれば、この遺産分割協議書をもとに名義変更などの手続が行えます。
選任申し立ての手続
選任の申し立ては、特別代理人選任申立書を作成して、管轄の家庭裁判所へ提出して行います。
管轄の家庭裁判所 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
例えば、未成年者の住所が
横浜市なら横浜家庭裁判所
川崎市なら横浜家庭裁判所川崎支部になります。
特別代理人選任申立てをできる人(申立権者)
申立てをできる人は、親権者または利害関係人とされています。
申立ての費用
・申立手数料 800円(収入印紙を申立書に貼って納めます)
・予納郵券 880円(裁判所によって若干変わります)
必要書類
・未成年者の戸籍謄本
・親権者の戸籍謄本
・特別代理人候補者の住民票、または戸籍附票
・利益相反に関する資料(遺産分割協議案など)
特別代理人候補者について
特別代理人選任申立書には特別代理人の候補者を記入する欄があります。特別代理人は弁護士などの専門家でなくともなることができます。遺産分割協議のために特別代理人を選任する場合は、未成年者の祖父母や親権者の兄弟などの身内の方で共同相続人ではない方を候補者とすることが一般的です。
遺産分割協議案の作成について
特別代理人選任の申立をする際に遺産分割協議案を提出しなければなりません。遺産分割協議案は、原則として未成年者にも法定相続分の遺産を確保した内容でなければなりませんが、相続財産の中に預貯金等の金融資産の割合が少ない場合であっても「代償分割」の方法により未成年者の相続分を確保することも可能ですのでご相談下さい。